副業先でケガをした。あるいは、本業と副業の掛け持ちで疲れが溜まり、体調を崩した。
そんなとき、「これって労災になるの?」「本業の会社に副業がバレるのでは」と、動くのをためらう人は少なくありません。
2020年9月の法改正で、本業と副業すべての勤務先の賃金を合算して給付額を計算する仕組みができました。
一方、業務委託(フリーランス)としての副業は原則対象外ですが、2024年11月から任意で労災保険に加入できる制度が始まっています。
この記事では、副業と労災保険の関係を、雇用契約の副業と業務委託の副業それぞれに分けて整理します。
- 副業先のケガが労災になる条件
- 2020年の改正で変わった給付額の計算方法
- 1つの職場では労災と認められなくても対象になる場合
- 職場から職場への移動中の事故の扱い
- 業務委託(フリーランス)の副業における2024年11月からの新制度
労災保険は「雇用契約があるか」で決まる
結論、副業がアルバイト・パートなど雇用契約にもとづくものであれば、労災保険は勤務先ごとに適用されます。1日だけ、週1回だけといった短時間の副業でも同じです。
一方、業務委託・フリーランスとして受けている副業は、原則として労災保険の対象になりません。労災保険は「労働者」を雇う事業主に加入義務がある制度で、業務委託には雇用関係(労働者性)がないと扱われるためです。
| 副業の形 | 労災保険の扱い |
|---|---|
| アルバイト・パート(雇用契約) | 対象。本業・副業それぞれの勤務先で適用 |
| 業務委託・フリーランス(雇用契約なし) | 原則対象外。2024年11月からの特別加入制度で任意加入は可能 |
まずは自分の副業が雇用契約なのか、業務委託なのかを確認してください。ここから先の話は、雇用契約の副業を前提に進めます。
2020年9月の改正|すべての勤務先の賃金を合算する
結論、複数の職場で雇用契約を結んで働く「複数事業労働者」が労災にあった場合、被災した勤務先だけでなく、すべての勤務先で支払われている賃金を合算して、給付額の基準となる「給付基礎日額」を算定します。
「複数事業労働者」とは、被災した時点で、事業主が同一でない複数の事業場と労働契約関係にある労働者のことです。
業務災害・複数業務要因災害・通勤災害のいずれの場合も、複数事業労働者を使用する事業ごとに算定した給付基礎日額に相当する額を合算します。
出典:厚生労働省「複数事業労働者への労災保険給付 わかりやすい解説」
改正前は、被災した勤務先の賃金だけをもとに給付額が計算されていました。副業先で被災した場合、副業の賃金が低いと給付額も低くなってしまうという問題があったため、この改正で解消されています。
複数業務要因災害|1つの職場では認められなくても
結論、脳・心臓疾患や精神障害などは、1つの職場の負荷だけでは労災と認められなくても、本業と副業すべての負荷を総合的に評価して労災と認められることがあります。この新しい類型を「複数業務要因災害」といいます。
本業だけなら長時間労働とまでは言えない、副業だけなら短時間だから問題ないと個別には判断されるケースでも、両方を合わせた負荷で健康被害が起きたと評価される場合があるという考え方です。
本業・副業のどちらでも人間関係のストレスを抱え、心身の不調が積み重なった場合。
どちらか一方の職場の状況だけで「労災ではない」と自己判断しないことが大事です。
通勤中の事故|職場から職場への移動も対象になりうる
結論、2006年4月から、複数の勤務先を掛け持ちする人が、1つめの勤務先での勤務を終えて2つめの勤務先へ向かう途中の災害も、通勤災害として認められるようになっています。
この場合、保険関係の処理は移動先である2つめの勤務先への「出勤」としてあつかわれます。本業から副業先へ移動する途中で事故にあった場合も、通勤災害として扱われうるということです。
出典:厚生労働省の解説にもとづく(複数就業者の事業場間移動に関する平成18年改正)
業務委託の副業は対象外|2024年11月から特別加入できる
結論、業務委託(フリーランス)としての副業は、これまで労災保険の対象外でした。2024年11月から、フリーランスが任意で労災保険に加入できる「特別加入制度」の対象が広がりました。
対象:フリーランス法の「特定受託事業者」が、業務委託事業者から業務委託を受けて行う事業など
加入方法:任意。個人で直接は申請できず、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体を経由して手続きする
保険料:全額自己負担(事業主負担なし)
補償内容:療養給付(治療費)、休業給付(給付基礎日額の8割)、障害給付、遺族給付など、労働者とほぼ同等
出典:厚生労働省の案内をもとに作成(2024年11月1日施行)
給付基礎日額は自分の収入をもとに申請し、労働局長が決定します。額を低くすれば保険料は安くなりますが、その分もらえる給付額も下がります。任意加入なので、入っていなければ業務委託中のケガは補償されません。
副業を業務委託で受けている、あるいはこれから受ける予定がある人は、フリーランス法で保護される契約条件もあわせて知っておいてください。
申請のときに必要なこと|副業を正直に申告する
結論、労災を請求するときは、すべての勤務先を正直に申告する必要があります。合算のメリットを受けるには、副業の存在を隠せません。
請求書には「その他就業先の有無」などの記入欄があり、各勤務先からの事業主証明が必要になります。この欄への記載がない場合は、複数事業労働者としての給付は行われない扱いになります。
ただし、就業規則で副業が禁止・許可制になっている場合、その違反自体は労災保険とは別の問題として扱われることがあります。
まずは労働基準監督署やハローワークの窓口に相談してください。
よくある質問
まとめ
- 副業が雇用契約(アルバイト・パート等)なら、副業先でのケガも労災保険の対象
- 2020年9月の改正で、すべての勤務先の賃金を合算して給付額を計算するようになった
- 複数業務要因災害により、1つの職場の負荷だけでは認められない脳・心臓疾患や精神障害も対象になりうる
- 職場から職場への移動中の事故も、通勤災害として認められる場合がある
- 業務委託(フリーランス)の副業は原則対象外。ただし2024年11月から任意の特別加入制度がある
- 請求時はすべての勤務先を正直に申告する必要がある
- 就業規則違反の問題と、労災請求ができるかどうかは別の話
副業は「何かあったときの補償が心配」という理由で踏み出せない人も多いはずです。実際には制度が年々整備されていて、雇用契約の副業ならすでに手厚く、業務委託でも任意で備える手段ができています。
知らないまま我慢したり、請求をあきらめたりする前に、まずは労働基準監督署やハローワークの窓口に相談してください。
※ 本記事は2026年9月時点の公表情報にもとづく一般的な説明です。労災保険の適用可否・給付内容・特別加入の対象業種は、個々の契約形態や状況により異なり、制度が改正されることもあります。実際の判断は、必ず労働基準監督署や特別加入団体などでご確認ください。
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