「これって、パワハラなんだろうか」
「相談したら、余計に立場が悪くなる気がする」
20代で早期離職を考える理由のうち、いちばん自分を責めやすいのがこれです。自分が弱いだけかもしれない。大げさに騒いでいるだけかもしれない。そう思って、誰にも言えないまま抱えている人は少なくありません。
そして会社には相談窓口を整備する法律上の義務があり、相談したことを理由に不利益な取扱いをすることは認められていません。
会社に言えない場合も、無料・匿名で相談できる公的な窓口があります。
この記事では、判断の基準・相談先・記録の取り方を、公的な情報にもとづいて整理します。
- それがパワハラに当たるかの判断基準(国の定義)
- 会社には相談窓口を置く義務があること
- 会社に言えないときの、社外の無料相談窓口
- 相談する前にやっておくべき記録の取り方
- 状況が変わらないときの選択肢
それはパワハラなのか|3つの要素
厚生労働省は、職場におけるパワーハラスメントを次の3つの要素をすべて満たすものと定義しています。
| 要素 | 具体例 | |
|---|---|---|
| ① | 優越的な関係を背景とした言動 | 上司から部下へ/逆らいにくい相手からの言動 |
| ② | 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの | 指導の域を超えた叱責、明らかに不要な要求 |
| ③ | 労働者の就業環境が害されるもの | 就業に支障が生じる程度の苦痛 |
厚生労働省は、該当しうる代表的な言動として次の6つの類型も示しています。
- 身体的な攻撃(暴行・傷害)
- 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
- 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
- 過大な要求(遂行不可能なことの強制、業務の妨害)
- 過小な要求(能力とかけ離れた程度の低い仕事を命じる、仕事を与えない)
- 個の侵害(私的なことに過度に立ち入る)
判断が難しいのは当然です。だからこそ、自分ひとりで結論を出さず、相談窓口で「これはどうですか」と聞いてください。それが窓口の役割です。
会社には、相談窓口を置く義務がある
意外と知られていませんが、これは法律で決まっています。
労働施策総合推進法の改正により、職場におけるパワーハラスメント防止措置が事業主の義務となりました。2020年6月1日から大企業に、2022年4月1日からは中小企業にも義務化されています。
- 方針の明確化と周知・啓発
- 相談・苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 相談があった場合、事実関係を迅速かつ正確に確認し、適正に対処するとともに再発防止措置を講じること
あわせて、相談者・行為者等のプライバシーを保護する措置と、相談したこと等を理由として解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定めることも必要とされています。
出典:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
つまり「相談したら不利益な扱いを受けるのでは」という不安に対して、制度上は保護が用意されているということです。
まずは就業規則や社内サイトで、ハラスメントの相談窓口がどこかを確認してください。人事部内にある場合も、外部に委託されている場合もあります。
会社に言えないときの、社外の窓口
とはいえ、社内の窓口が機能していない、または窓口の担当者と行為者が近い、というケースもあります。その場合は社外を使ってください。すべて無料です。
| 窓口 | 相談できること | 特徴 |
|---|---|---|
| 総合労働相談コーナー (各都道府県労働局) | いじめ・嫌がらせ、解雇、労働条件など | 無料・匿名可。面談または電話。平日9:30〜17:00 |
| 労働基準監督署 | 労働基準法違反の疑い(長時間労働・未払い賃金など) | 法令違反への対応が中心 |
| こころの耳 (厚生労働省) | 心身の不調、メンタルヘルスの相談 | 電話・SNS・メール。匿名・無料 |
| 法テラス | 法的トラブル全般 | 情報提供は無料。無料法律相談は収入・資産の要件あり |
最初の一本は、総合労働相談コーナーで十分です。匿名で相談でき、「これはパワハラに当たるのか」という段階の話も聞いてもらえます。
厚生労働省の「こころの耳」は、働く人のメンタルヘルス相談を電話・SNS・メールで無料・匿名で受け付けています。会社には知られません。
相談する前に|記録を取る
これが決定的に効きます。相談しても「証拠がない」で止まってしまうのが、いちばん多い挫折パターンです。
| 記録すること | ポイント |
|---|---|
| 日時 | 「◯月◯日 15時ごろ」まで書く |
| 場所 | 会議室、フロア、オンライン会議など |
| 誰が・誰に | その場にいた人(第三者)も記録する |
| 言われたこと | 要約せず、できるだけそのままの言葉で |
| 自分の状態 | その後の体調・睡眠・欠勤など |
メール・チャットのやりとりは消さずに保存してください。診療を受けた場合は、受診の記録も重要な資料になります。
記録は「戦うため」だけのものではありません。相談窓口で状況を正確に伝えるためにも必要です。つらい状態で口頭だけで説明するのは、想像以上に難しいものです。
それでも状況が変わらないなら
正直に書きます。相談しても、すぐに環境が変わるとは限りません。
| 段階 | 取れる手 |
|---|---|
| まず | 社内の相談窓口/信頼できる上長 |
| 社内で動かない | 総合労働相談コーナー(無料・匿名) |
| 法令違反の疑いがある | 労働基準監督署 |
| 心身に症状が出ている | 医療機関/こころの耳。休むことを優先 |
| 環境が変わる見込みがない | 異動の相談、または退職 |
逃げることは、負けではありません。この記事のサイトは早期離職を経験した人が書いていますが、ハラスメントがある環境で「3年は続けろ」を適用する理由はひとつもありません。
心身を壊すと、回復には転職活動よりずっと長い時間がかかります。順番を間違えないでください。
パワハラの相談についてよくある質問
まとめ|一人で判断しなくていい
- パワハラには国の定義がある(①優越的な関係 ②必要かつ相当な範囲を超える ③就業環境が害されるの3要素)
- 厚労省は6つの代表的な類型も示している
- 2022年4月から中小企業にも防止措置が義務化。会社には相談窓口を置く義務がある
- 相談したことを理由に不利益な取扱いをされないと定めることが求められている
- 会社に言えないなら総合労働相談コーナー(無料・匿名)
- 心身に症状があるならこころの耳・医療機関を優先
- 日時・場所・その場にいた人・言われた言葉を記録する
「自分が弱いだけかもしれない」と思っている時点で、あなたはもう十分に我慢しています。パワハラかどうかを判断するのは、あなたの仕事ではありません。それを判断するための窓口が、無料で用意されています。
まずは電話を1本。それだけで構いません。
※ 本記事は2026年9月時点の制度にもとづく一般的な説明であり、法律相談ではありません。個別の事案については、労働基準監督署・総合労働相談コーナー・弁護士等の専門家にご相談ください。
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