退職が決まって、意外と後回しにされるのが健康保険です。
会社の保険証は、退職日の翌日から使えません。そして次の保険に入る手続きには、思ったより短い期限があります。
①任意継続(20日以内)/②国民健康保険(14日以内)/③家族の扶養に入る
とくに任意継続の20日は、過ぎたら二度と選べません。
そして会社都合や「やむを得ない自己都合」で辞めた人は、国保の保険料が大きく下がる制度があります。
この記事では、3つの違いと期限、そして20代が見落としやすい軽減制度を整理します。
- 3つの選択肢と、それぞれの期限
- 保険料がどう変わるか
- 非自発的失業者の国保料軽減(前年の給与所得を100分の30とみなす)
- 手続きをしないまま放置するとどうなるか
- 自分がどれを選ぶべきかの判断のしかた
まず|期限が3つとも違う
ここだけは先に頭に入れてください。期限を過ぎると選べなくなるものがあります。
| 選択肢 | 期限 | どこへ | 過ぎたら |
|---|---|---|---|
| ①任意継続 | 退職日の翌日から20日以内 | 協会けんぽ(または健康保険組合) | もう選べない |
| ②国民健康保険 | 退職日の翌日から14日以内 | 市区町村の窓口 | 手続き自体は可能。ただしさかのぼって保険料を払う |
| ③家族の扶養 | 健康保険組合ごとに期限あり | 家族の勤務先経由 | 収入の条件を満たせば後からでも可 |
いちばん怖いのは①の20日です。郵送で申請する場合も20日以内に届いている必要があります。迷っているうちに過ぎてしまう人が多いところです。
3つの選択肢を比べる
| ①任意継続 | ②国民健康保険 | ③家族の扶養 | |
|---|---|---|---|
| 保険料 | 在職中の約2倍が目安(会社負担分がなくなるため。上限あり) | 前年の所得で決まる | 0円 |
| 入れる条件 | 退職前に継続して2か月以上の被保険者期間 | 誰でも入れる | 収入の条件を満たすこと |
| 使える期間 | 最長2年 | 制限なし | 条件を満たす間 |
| 向いている人 | 前年の所得が高く、国保のほうが高くなる人 | 前年の所得が低い人/軽減の対象になる人 | 収入が少なく、家族の健康保険に入れる人 |
20代の早期離職だと、③が使えるなら③、使えないなら②が有利になることが多いです。理由は次の章にあります。
①任意継続|会社の保険をそのまま2年続ける
退職前に入っていた健康保険を、そのまま続けられる制度です。加入は最長2年間で、退職前に継続して2か月以上の被保険者期間があることが条件になります。
自己負担は在職中のおよそ2倍になります。(保険料の計算に使う標準報酬月額には上限があります)
「保険証が変わらないから楽そう」という理由だけで選ぶと、金額を見て驚くことになります。
途中でやめることもできる
以前は「2年間抜けられない」制度でしたが、現在は本人が「やめたい」と申し出れば資格を喪失できます。就職して次の会社の健康保険に入ったときも、その時点で資格がなくなります。
ただし、保険料を納付期限までに払わなかった場合も資格を失います。うっかり払い忘れると、その時点で無保険になるので注意してください。
②国民健康保険|市区町村に14日以内
退職日の翌日から14日以内に、住んでいる市区町村の窓口で手続きします。窓口のほか、郵送や電子申請ができる自治体もあります。
- 健康保険資格喪失証明書(または退職証明書)
- 本人確認書類
- マイナンバーが分かるもの
※ 自治体によって必要書類が異なります。行く前に市区町村のサイトで確認してください。
「健康保険資格喪失証明書」は会社が発行するものです。退職の手続きをするときに、忘れずに依頼してください。
★ 会社都合などで辞めた人は保険料が大きく下がる
ここが、この記事でいちばん知ってほしい部分です。知らずに普通の保険料を払っている人がいます。
倒産・解雇などで離職した特定受給資格者、または雇止めなどで離職した特定理由離職者が対象です。
保険料の所得割額を計算するとき、前年の給与所得を100分の30とみなして算定されます。
高額療養費などの所得区分の判定にも、同じ扱いが適用されます。
出典:各市区町村(国民健康保険)
前年の給与所得が「3割として扱われる」ということなので、保険料が大幅に下がります。前年フルで働いていた人ほど効きます。
判定には雇用保険受給資格者証(または雇用保険受給資格通知)の離職理由コードを使います。
国保の手続きに行くとき、「非自発的失業者の軽減の対象になりますか」と窓口で必ず聞いてください。
「自己都合だから関係ない」と決めつけない
ここを誤解している人が多いです。対象は倒産・解雇だけではありません。
特定理由離職者には、雇止めのほか、正当な理由がある自己都合の離職が含まれます。体調をくずした、家族の介護が必要になった、といった事情が該当し得ます。
該当するかどうかは離職理由コードで決まります。自分で判断せず、ハローワークで受け取る書類を確認してください。判断を間違えると、下げられるはずの保険料をそのまま払い続けることになります。
③家族の扶養に入る|保険料はかからない
親や配偶者が加入している健康保険の被扶養者になる方法です。条件を満たせば保険料の負担はありません。
| 条件 | 基準 |
|---|---|
| 年間収入 | 130万円未満が原則 |
| 19歳以上23歳未満(配偶者を除く) | 150万円未満 |
| 60歳以上、または障害厚生年金を受けられる程度の障害者 | 180万円未満 |
| 同一世帯に属している場合 | あわせて、被保険者の年間収入の2分の1未満であること |
ここでいう「年間収入」は、これまでに稼いだ額ではなくこれから見込まれる額で判断されます。退職して収入が途切れるなら、対象になる可能性があります。
まず家族から勤務先に確認してもらうのが確実です。失業給付を受けると収入とみなされる場合もあります。
何もしないとどうなるか
「しばらく病院に行かないから、あとでいいや」と放置する人がいます。ここは結論がはっきりしています。
| 起きること | 内容 |
|---|---|
| 保険料はさかのぼって発生する | 手続きが遅れても、国保の資格が発生した月までさかのぼって納めることになる。先延ばししても払う総額は減らない |
| その間の医療費は全額自己負担 | やむを得ない理由があると認められる場合を除き、窓口で全額を払うことになる |
| 任意継続は選べなくなる | 20日を過ぎた時点で、この選択肢は消える |
なお、14日を過ぎても手続きそのものはできますし、罰則もありません。過ぎてしまった人は、気づいた時点ですぐ窓口へ行ってください。
どれを選ぶか|判断の順番
- 1.家族の扶養に入れるかを家族の勤務先に確認する(入れるなら保険料0円)
- 2.入れないなら、国保の保険料を市区町村の窓口で試算してもらう
- 3.そのとき「非自発的失業者の軽減」の対象かを必ず聞く
- 4.任意継続の保険料と比べる(協会けんぽ等に確認)
- 5.安いほうを、期限内に手続きする
ポイントは「比べてから決める」ことです。どちらが安いかは前年の所得と自治体によって変わるので、一般論では決まりません。両方の金額を聞いてから選んでください。
そして時間がありません。任意継続の20日から逆算して動いてください。
よくある質問
まとめ
- 会社の保険証は退職日の翌日から使えない
- 選択肢は任意継続・国民健康保険・家族の扶養の3つ
- 任意継続は20日を過ぎたら二度と選べない(郵送も20日以内に必着)
- 任意継続の保険料は在職中のおよそ2倍(会社負担分がなくなるため)
- 国民健康保険は14日以内。過ぎても手続きは可能だが、保険料はさかのぼる
- 非自発的失業者は、前年の給与所得を100分の30とみなして保険料が軽減される。届出が必要
- 扶養は年間収入130万円未満が原則(19歳以上23歳未満は150万円未満)
- どれが安いかは前年の所得と自治体で変わる。比べてから決める
健康保険は、辞めることを決めた人がいちばん後回しにしやすい手続きです。でも期限が短く、過ぎると選択肢が減ります。
やることは難しくありません。家族に聞く、市区町村の窓口で試算してもらう、軽減の対象か確認する。この3つだけです。退職日が決まったら、その日のうちに動き出してください。
※ 本記事は2026年9月時点の公表情報にもとづく一般的な説明です。保険料の額・必要書類・軽減の適用は、加入する健康保険や市区町村によって異なります。実際の手続きは、協会けんぽ等の加入先、またはお住まいの市区町村の窓口でご確認ください。
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