副業でトラブルに遭ったら?20代が知っておくフリーランス法と無料の相談窓口

副業でトラブルに遭ったら?20代が知っておくフリーランス法と無料の相談窓口 副業

「報酬が3か月経っても振り込まれない」
「聞いていた金額と違う額で請求された」
「何度もやり直しを言われて、結局タダ働きになった」

副業を始めた20代からよく出てくる話です。そして多くの人が「個人でやっている以上、泣き寝入りするしかない」と思い込んでいます。

そうではありません。2024年11月1日から、副業で仕事を受ける会社員を守る法律が動いています。

結論 会社員が副業として業務委託で仕事を受ける場合も、フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の保護対象になり得ます。
発注側には、取引条件を書面などで明示する義務と、原則60日以内に報酬を支払う義務があります。
そして、トラブルの相談は弁護士に無料でできます。

この記事では、副業でトラブルに遭ったときに何が言えるのか、そして始める前に何を残しておけばいいのかを整理します。

副業を始める前に読んでください
この記事でわかること
  • 会社員の副業も法律の対象になり得るという事実(公正取引委員会の見解)
  • 発注側に課されている義務の一覧
  • よくある5つのトラブルが、法律上どう扱われるか
  • 始める前に文字で残しておくべき項目
  • 無料で相談できる公的な窓口

まず|会社員の副業も、この法律の対象になり得る

この法律が守るのは「特定受託事業者」です。名前が固いので身構えますが、中身は単純です。

用語意味
特定受託事業者
(守られる側)
業務委託を受ける、従業員を使っていない個人。または代表者以外に役員がなく従業員も使っていない法人
「従業員を使用」とは週の所定労働時間が20時間以上で、かつ31日以上の雇用が見込まれる労働者を雇うこと
特定業務委託事業者
(義務を負う側)
従業員を使っている発注者。会社から仕事を受けるなら、たいていこちらに当たる

一人で受けている副業は、まず間違いなく前者です。問題は「会社に雇われている自分でも当てはまるのか」という点でした。

公正取引委員会の見解 ある事業者から労働契約に基づき雇用されている労働者であっても、副業で他の事業者から業務委託契約に基づき業務を受託している場合は、その業務を行う範囲においては「特定受託事業者」に該当し得るとされています。
出典:公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法に関するQ&A」

本業で雇われていることは、副業側の保護を打ち消しません。ここを知らないまま「自分は会社員だから関係ない」と諦めている人が多いです。

ただし、対象にならない副業もある

副業の形扱い
企業から業務委託で受注(ライティング・デザイン・開発など)対象になり得る
アルバイト・パート(雇用契約)この法律ではなく労働基準法などの対象
一般の消費者に直接売る(ハンドメイド販売など)事業者間の取引ではないため対象外
自分が誰かを雇って事業をしている「従業員を使用」に当たると対象外

アルバイトが対象外なのは、守られないという意味ではありません。雇用契約であれば労働法が使えるので、そもそも別の枠組みで守られます。

発注側に課されている義務

義務は、契約の長さによって適用範囲が変わります。ここが分かりにくいので表にします。

義務内容適用される契約
取引条件の明示業務の内容・報酬の額・支払期日などを、書面または電磁的方法で示すすべての業務委託
期日における報酬支払給付を受け取った日から60日以内のできる限り短い期間で支払う(再委託の場合は、発注元から支払を受ける期日から30日以内)すべての業務委託
募集情報の的確表示募集広告に虚偽や誤解を生む表示をしないすべての業務委託
ハラスメント対策の体制整備相談に対応する体制を整えるすべての業務委託
7つの禁止行為下の表で詳述1か月以上の継続的業務委託
育児介護等への配慮妊娠・出産・育児・介護と両立できるよう配慮する6か月以上は義務。それ未満は努力義務
中途解除等の事前予告解除や不更新は原則30日前までに予告する6か月以上の継続的業務委託

注目してほしいのは、「取引条件の明示」と「60日以内の支払」には期間の条件がないことです。単発の1件でも、発注側は条件を示さなければならず、受け取ってから60日を超えて支払期日を設定することはできません。

7つの禁止行為(1か月以上の継続的な委託の場合)

禁止行為ありがちな形
受領拒否納品したのに「やっぱりいらない」と受け取らない
報酬の減額「予算が減ったので今回は半額で」と後から下げる
返品問題がないのに納品物を返してくる
買いたたき相場と比べて著しく低い額を不当に押しつける
購入・利用強制業務と関係のない商品やサービスを買わせる
不当な経済上の利益の提供要請無償での追加作業や協賛金を求める
不当な給付内容の変更・やり直し費用を負担せずに、何度もやり直しをさせる

副業で被害が多いのは、太字にした4つです。特に「報酬の減額」と「無限のやり直し」は、断りづらさにつけ込まれる形で起きます。

よくある5つのトラブルは、法律上どうなるか

起きたこと法律上の見え方まず何をするか
条件を口約束のまま始めた発注側は書面等で明示する義務がある。示されていないのは義務違反の可能性今からでもメールで条件を確認して文字に残す
納品から3か月経っても未入金受領日から60日以内という支払期日のルールを超えている可能性納品日と請求日を整理して支払を求める
後から「半額で」と言われた1か月以上の継続的な委託なら報酬の減額として禁止当初の金額が分かる記録を集める
費用なしで何度もやり直し1か月以上の継続なら不当なやり直しとして禁止依頼内容の変更履歴を残す
急に契約を打ち切られた6か月以上の継続的な委託なら原則30日前の予告が必要契約開始日を確認する

どれも共通しているのは、記録がなければ主張できないという点です。だから次の章が本題になります。

始める前にやっておく3つのこと

1. 条件をチャットかメールで残す

契約書がなくても構いません。電磁的方法での明示が認められているので、メールやチャットのやり取りで足ります。相手から示されない場合は、自分から書いて確認を取ってください。

確認しておく項目
  • 発注する人・される人(名称)と、委託した日
  • 業務の内容(どこまでやれば完了か)
  • 納品の期日と、納品する場所や方法
  • 報酬の額と、その計算方法
  • 支払期日と支払方法
  • 修正は何回まで無償か

最後の「修正は何回まで」は法律に書かれた項目ではありませんが、副業でもっとも揉めるところなので入れておくことを勧めます。

2. 納品した日を記録する

支払期日のルールは「受け取った日」を起点に数えます。納品した日が分からないと、60日を超えているかどうかを言えません。送信したメールを残しておくだけで十分です。

3. 就業規則で副業の扱いを確認する

法律の保護があっても、勤務先との関係は別問題です。厚生労働省のモデル就業規則は2018年の改定で「労働者は勤務時間外において他の会社等の業務に従事することができる」という形になりましたが、これはあくまでモデルであり、勤務先の規則がどうなっているかは自分で確認する必要があります。

関連記事 副業を「稼ぐため」ではなく転職の判断材料として使う考え方はこちらです。
転職を迷っているなら副業で市場価値を試す|辞めずにできる確認法

トラブルになったときの無料相談先

ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。弁護士に無料で相談できる公的な窓口があります。

フリーランス・トラブル110番(厚生労働省)

厚生労働省が関係省庁および第二東京弁護士会と連携して設置した相談窓口です。報酬の未払い、あいまいな契約、ハラスメントなどを弁護士に相談できます。

  • 相談は無料
  • 匿名でも相談できる
  • 電話・メール・対面に対応
  • 話がまとまらない場合の和解あっせん手続まで支援

freelance110.mhlw.go.jp(厚生労働省)

「こんな小さい金額で相談していいのか」と思う必要はありません。金額の大小ではなく、扱いが適正かどうかを見る窓口です。

行政に申し出るという方法もある

法律に違反する行為があるときは、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働大臣に申し出ることができます。行政は発注側に対して助言、指導、報告徴収や立入検査、勧告、公表、命令を行うことができ、命令に違反した場合などには罰金が定められています。

覚えておくこと 実際に申し出るかどうかは別として、「行政が動く仕組みがある」ことを知っているだけで交渉の立ち位置が変わります。
まずはフリーランス・トラブル110番で、自分のケースがどう見えるかを聞くのが現実的です。

ハラスメントを受けた場合

発注側には、ハラスメントに関する相談対応の体制を整える義務があります。ただ、その発注者自身が相手である場合は社内の窓口が機能しません。その場合も上の窓口が使えます。職場のハラスメント全般の相談先は、別の記事で整理しています。

よくある質問

Q
契約書を交わしていなくても、法律は使えますか?
A
取引条件の明示は書面または電磁的方法で行うこととされており、そもそも明示しないこと自体が発注側の義務違反になり得ます。契約書がないから泣き寝入り、という結論にはなりません。メールやチャットのやり取りは重要な記録になるので、消さずに残してください。
Q
クラウドソーシング経由の仕事も対象ですか?
A
誰が発注者にあたるかによって扱いが変わるため、一律には言えません。ただし従業員を使用する事業者から業務委託を受けているのであれば、対象になり得ます。判断に迷う形であれば、フリーランス・トラブル110番で確認するのが確実です。
Q
相談したことが発注元に伝わって、切られませんか?
A
フリーランス・トラブル110番は匿名での相談ができます。まず名前を出さずに「自分のケースはどう見えるか」を聞き、そのうえで次の動きを決めることができます。相手に連絡が行くかどうかも含めて、相談の段階で確認してください。
Q
副業がアルバイトの場合はどうなりますか?
A
雇用契約であれば、この法律ではなく労働基準法などの対象になります。給与が支払われない、労働時間が記録されないといった問題は、労働基準監督署や総合労働相談コーナーが相談先です。守られないわけではなく、使う制度が違うという整理になります。
Q
副業を始めるのが不安です。何から確認すればいいですか?
A
順番としては、勤務先の就業規則を確認し、条件を文字で残せる相手かどうかを見て、そのうえで受けるかを決めるのが安全です。条件を書面で示すことを渋る相手は、後で揉める確率が高いと考えてよいです。

まとめ

この記事のまとめ
  • 会社員が副業で業務委託を受ける場合も、その範囲では保護の対象になり得る
  • 発注側には取引条件を書面等で明示する義務があり、これは単発の仕事でも同じ
  • 報酬は受け取った日から60日以内に支払われなければならない
  • 1か月以上の継続なら、報酬の減額や不当なやり直しは禁止行為
  • 6か月以上の継続なら、打ち切りには原則30日前の予告が必要
  • トラブルはフリーランス・トラブル110番で弁護士に無料・匿名で相談できる
  • 始める前にやるのは条件を文字で残すことだけ

副業のトラブルは、能力の問題ではなく条件が曖昧なまま始めたことで起きます。逆に言えば、最初にメールを1通送っておくだけで、ほとんどは防げます。

そして、もし何かが起きても一人で抱える必要はありません。無料で聞ける場所があることを、始める前に知っておいてください。

※ 本記事は2026年9月時点の公表情報にもとづく一般的な説明であり、法律上の助言ではありません。個別の事案の判断は、公正取引委員会・厚生労働省の各サイト、またはフリーランス・トラブル110番などの窓口でご確認ください。

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