「試用期間中だから、いつでも辞めさせられる」
「向いてないから、来月から来なくていいと言われた」
入社して間もない時期にこう言われると、頭が真っ白になります。そして「試用期間なら仕方ない」と受け入れてしまう人が非常に多いのですが、それは正確ではありません。
そしてこの場面でいちばん危険なのは、その場で退職届を書いてしまうことです。自己都合退職の扱いになり、失業保険などで不利になる可能性があります。
この記事では、法律上どうなっているのか、言われたときに確認すべきこと、そして相談先を整理します。
- 試用期間中の解雇は「自由」ではない理由
- 解雇予告のルール(14日が分かれ目)
- 「解雇」と「退職勧奨」の決定的な違い
- 言われたときに、その場でやってはいけないこと
- 無料の相談先と、その後の就職活動
試用期間中でも、解雇は自由ではない
まず前提です。試用期間中であっても、労働契約は成立しています。
厚生労働省の資料でも、通常の試用期間中の契約関係は「解約権留保付の労働契約」と整理されています。つまり会社に留保された解約権はあるものの、契約そのものは成立しているということです。
- 試用期間中の解雇も、「解雇」です。手続きのルールが適用されます
- 「試用期間だから理由は要らない」ということにはなりません
- 納得できない場合は、労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談できます
解雇予告のルール|分かれ目は「14日」
ここは具体的に決まっています。
労働基準法第20条第1項により、使用者は労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前に予告しなければならず、予告をしない場合は30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならないとされています。
ただし試用期間中には例外があります。
| 状況 | 解雇予告(30日前予告または予告手当) |
|---|---|
| 試用開始から14日以内 | 労基法20条の適用なし(21条但書) |
| 14日を超えて引き続き使用されている | 適用あり。30日前の予告または解雇予告手当が必要 |
つまり入社から14日を超えているなら、「明日から来なくていい」は原則として通りません。30日前の予告か、解雇予告手当の支払いが必要です。
なお予告期間の計算では、予告をした日は日数に算入されず、その翌日から数えます。
それは「解雇」か「退職勧奨」か
ここがこの記事でいちばん重要な部分です。同じような言われ方でも、法的な意味がまったく違います。
| 解雇 | 退職勧奨 | |
|---|---|---|
| 意味 | 会社が一方的に契約を終了させる | 会社が「辞めてほしい」と勧めるだけ |
| 言い方の例 | 「解雇します」「◯日付で辞めてもらいます」 | 「辞めたほうがいいと思う」「合わないんじゃないか」 |
| 断れるか | —— | 断れる。応じる義務はない |
| 退職届を書くと | —— | 自己都合退職の扱いになりうる |
| 離職理由 | 会社都合 | 書き方次第で自己都合になる |
- 退職届・退職願にその場で署名しない
- 「分かりました」と口頭で同意しない
- 書類の内容を確認せずに押印しない
言うべきことは1つだけです。「持ち帰って考えます」
言われたときに確認する4つ
- 「これは解雇ということでしょうか」と確認する(言葉を曖昧にさせない)
- 理由を書面でもらえるかを聞く(退職時の証明書を請求できます)
- 最終出社日と退職日を確認する
- 解雇予告手当の有無を確認する(14日を超えている場合)
そしてその日のうちに、言われた内容を記録してください。日時・場所・誰が・どんな言葉で。スマホのメモで構いません。あとで相談するときに必ず役立ちます。
相談先|すべて無料
| 窓口 | 相談できること |
|---|---|
| 労働基準監督署 | 解雇予告手当が支払われないなど、労働基準法違反の疑い |
| 総合労働相談コーナー (各都道府県労働局) | 解雇の相談全般。無料・匿名可。平日9:30〜17:00 |
| 法テラス | 法的トラブル全般。無料法律相談は収入・資産の要件あり |
迷ったら総合労働相談コーナーに電話してください。匿名で相談でき、「これは解雇なのか退職勧奨なのか」という段階の話も聞いてもらえます。
その後の就職活動への影響
不安だと思うので、正直に書きます。
| 心配 | 実際のところ |
|---|---|
| 履歴書に書かないといけないか | 書く。社会保険の記録が残る |
| 面接で不利にならないか | 理由を説明できれば決定的ではない |
| 失業保険はどうなるか | 会社都合なら、自己都合より扱いが有利になる |
| もう就職できないのでは | 卒業後3年以内なら新卒枠・第二新卒枠が使える |
3つ目が重要です。退職届を書いて自己都合にしてしまうと、この有利さを自分から手放すことになります。だからこそ、その場で署名しないでください。
面接での説明は、感情ではなく事実で短く。「試用期間中に会社の判断で契約終了となりました。入社前の業務理解が不十分だった点は反省しており、今回は◯◯まで確認したうえで応募しています」——この形で十分です。
試用期間中の解雇についてよくある質問
まとめ|その場で署名しない
- 試用期間中の契約関係も労働契約。解雇は自由ではない
- 入社から14日を超えていれば、30日前の予告または解雇予告手当が必要(労基法20条・21条)
- 「解雇」と「退職勧奨」は別物。退職勧奨は断れる
- その場で退職届に署名しない。「持ち帰って考えます」
- 言われた内容をその日のうちに記録する
- 相談は労働基準監督署・総合労働相談コーナー(無料)
- 会社都合と自己都合では失業保険の扱いが違う
試用期間中に「向いていない」と言われると、自分を全否定された気持ちになります。それでも、手続きのルールを確認することは、あなたの正当な権利です。
署名する前に、電話を1本。それだけで結果が変わることがあります。
※ 本記事は2026年9月時点の制度にもとづく一般的な説明であり、法律相談ではありません。個別の事案については、労働基準監督署・総合労働相談コーナー・弁護士等の専門家にご相談ください。
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